2人でやり切れ、後悔なし 修徳(3年)・斎藤純捕手、紘選手<高校野球・東東京>

兄の純選手(右)と弟の紘選手=神宮球場で

試合後、泣き崩れる兄の肩を弟が抱きかかえた。「胸張って帰るぞ。上向くぞ」。普段は弟の方が泣き虫なのに、今日は逆だった。

兄の純(じゅん)は捕手、弟の紘(ひろ)は遊撃手。幼いころからずっと一緒のチームでプレーしてきた双子だ。

「父はバッテリーを組ませたかったみたい。でも、ヒロはメンタル弱いので」と兄は笑う。高校も同じ名門校に入り、甲子園を目指した。互いの存在があるから、苦しい練習も歯を食いしばってやり抜けた。

6点を追う九回2死一塁。兄に打席が回ってきた。次の打者には弟が控えていた。「ヒロにつなげば絶対になんとかしてくれる」。左前打を放ち、一塁上で弟に向かって何度もガッツポーズした。

打席に入った弟には、大歓声の中でも兄の声がはっきり聞こえた。「思い切り行けよ!」。小さくうなずいた。4球目。甘く入った直球を振り抜くと、打球は右翼手の頭を越えた。

一塁走者の兄は「ヒロが打ったなら、絶対に野手を越える」と振り返らず、本塁を目指して走った。生還。二塁に達し、メンタルの強さを見せつけた弟は、兄に向かって大きくガッツポーズした。「ジュンがつないでくれたから打てた」

反撃は及ばず、双子の夏は終わった。弟は野球を続けるが、兄はまだ悩んでいる。今日が一緒にプレーする最後の試合になるかもしれない。それでも、2人は口をそろえた。「2人でやり切れたので、後悔はしていません」


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