太平洋戦争前の政治の舞台になった近衛文麿元首相(このえ・ふみまろ、1891〜1945年)の邸宅「荻外(てきがい)荘」(東京都杉並区荻窪2)を杉並区が復元した。のちの日独伊三国同盟にもつながったとされる「荻窪会談」をはじめ、歴史の転換点となる重要な会談が行われた場所。戦後に区外に移築されていた建物の一部を再移築し、往時の姿を取り戻した。
◆書斎はほぼ当時のまま
杉並区が復元した近衛文麿元首相の邸宅「荻外荘」=東京都杉並区荻窪2で(杉並区提供)
荻外荘は築地本願寺などを手がけた建築家・伊東忠太が設計。1927年に建てられ、1937年に近衛が譲り受けた。
近衛文麿元首相
1940年7月、組閣に当たって陸相候補の東条英機らを招いて開いたのが「荻窪会談」。日独伊の連携強化が話し合われた。1941年10月には対米開戦を回避するべく閣僚らが出席して「荻外荘会談」も開かれた。戦争責任を問われた近衛は、1945年12月に荻外荘の書斎で服毒自殺した。
復元された建物は木造平屋の約500平方メートル。重要な会談の舞台となった客間、応接室、食堂などを写真や設計図を基に再現した。書斎はほぼ当時のまま残されているという。
◆一般公開は12月9日から
区は2014年に近衛家から土地と建物を購入。2016年に国の史跡に指定された。2018年には豊島区内に移築されていた邸宅の一部を買い戻し、再移築もした。
荻窪会談など日本の方向性を決定づける会談が行われた客間=東京都杉並区荻窪2で(杉並区提供)
一帯を芝生広場を含めて「荻外荘公園」(約7000平方メートル)として開園する。プロジェクト全体の事業費は約59億円で、国や都からの補助金も活用した。
岸本聡子区長が12日の記者会見で発表し、「歴史的建築物としての価値を共有し、荻窪の新たな魅力を知ってもらいたい」と話した。12月8日に開園式があり、翌9日から一般公開する。開園時間は午前9時〜午後5時。(浜崎陽介)
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