明治から昭和にかけて活躍した洋画家の岡田三郎助(1869~1939年)が、東京都渋谷区恵比寿に構えたアトリエで筆を握る写真が白根記念渋谷区郷土博物館・文学館(東4)に展示されている。100年前の絵画制作の現場が見て取れ、同館は「貴重な資料」と話している。(中村真暁)
雑誌に掲載された岡田三郎助のアトリエ写真=渋谷区郷土博物館・文学館提供
岡田は女性像を得意とし、東京美術学校(現東京芸術大)の教授を務めるなど、洋画界をけん引した。1908(明治41)年ごろには、自宅の隣に洋風建築のアトリエを建てた。
写真は、23(大正12)年に発行された雑誌「国際書報」に掲載されたもので、今年3月に区民が同館に雑誌を寄贈した。岡田の作品「萩」や「白衣の少女」が飾られた部屋に、絵筆を持つ岡田と女性モデルが写っている。
企画展で展示中の雑誌「国際書報」=渋谷区で
キャンバスには枝を手に持つ女性が描かれている一方、実際のモデルは旗棒をつかみ、クッションのような物で姿勢を保っている。松井圭太学芸員は「有名画家の100年前の制作風景をのぞいているようだ」と話す。
アトリエは2018年、岡田が生まれた佐賀県の県立博物館・県立美術館の隣に移築された。県立美術館の岩永亜季学芸員は写真について「置かれている扇風機やダルマ型のストーブをはじめ、当時のアトリエの雰囲気や風情を伝える資料。とても面白い」と話した。
写真は郷土博物館で開催中の「新収蔵資料展」で10月1日まで展示している。「忠犬ハチ公」の関連資料などもある。月曜(休日の場合は直後の平日)休館。一般100円、小中学生50円。問い合わせは同館=電03(3486)2791=へ。