東京高等裁判所が入る裁判所合同庁舎=東京都千代田区で
1957年に東京都砂川町(現立川市)にあった米軍立川基地に立ち入ったとして学生らが逮捕、起訴された「砂川事件」を巡り、公平な裁判を受ける権利を侵害されたとして、元被告らが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が6日、東京高裁(後藤健裁判長)であった。原告側は「司法の独立の下で、正しい判決を出してください」と訴え、国側は棄却を求め、即日結審した。判決は来年1月31日。
当時の田中耕太郎最高裁長官が駐日米大使らと密談し、裁判の見通しを伝えたとの記録が、2008年以降、米国立公文書館で見つかった。日米安全保障条約に基づく刑事特別法違反罪で起訴され、有罪が確定した土屋源太郎さん(90)=静岡市=らが19年、訴えを起こした。
弁論で土屋さんは意見陳述し「密談記録から、公平な裁判を受ける権利が侵害されたのは明らか。再審請求も認められず、名誉回復できなかった。裁判長、司法の独立の下、正しい判決をぜひお願いします」と求めた。
代理人弁護士は「公平な裁判か否かの判断は厳格にされるべきだ」と主張し、「特段の事情がない限り、公平な裁判でないと言えない」とした一審判決を「原則と例外が逆転している」と批判した。
今年1月の東京地裁判決は「具体的な評議内容、予想される判決内容まで伝えた事実は認められず、公平な裁判でないとは言えない」として請求を棄却。土屋さん側が控訴していた。(加藤益丈)
【関連記事】「砂川事件」めぐる国賠請求、東京地裁は棄却元学生らの「公平な裁判の権利侵害」訴えを退ける
【関連記事】いびつな日米関係、ゆがんだ三権分立…約70年前の「砂川事件」が出発点だった15日に東京地裁で判決
【関連記事】「司法の職務放棄だ」…最高裁はどうして憲法判断を避けたのか安保法制訴訟元判事が明かす「原則」