<北川民次展―メキシコから日本へ>(上)《ロバ》最も身近な動物を誠実に

革命後のメキシコと日本で画家・美術教育者として活躍した北川民次(1894~1989年)の、生誕130年を記念した展覧会が世田谷美術館で21日から11月17日まで開催される。注目の作品を、担当学芸員が3回にわたり紹介する。

《ロバ》1928年愛媛県美術館

1914年、20歳で日本を出た北川民次は、ニューヨークで働きながら絵を学び、「本当のライフ」を求めてメキシコへ。カトリックの聖人の額絵を売り歩き各地の先住民集落を回ったのち、首都の国立美術学校に入って頭角を現した。画家たちが公共建築の壁にメキシコの歴史を描く「壁画運動」が始まっていたが、北川が関わったのは先住民のための美術教育だ。25年、首都郊外のトラルパン野外美術学校に赴いて以後、生徒たちの表現に心底魅了されながら制作を続けた。

彼らに最も身近な動物を誠実に描いた《ロバ》は、政府後援の美術雑誌に載った作品のひとつ。土産物屋でメキシコを分かった気になる観光客と違い、北川は「人々の暮らしに自ら身をさらし」、その作品は「感傷的な空想抜きでわれわれを圧倒する」との紹介記事を書いたのは、トラルパンに北川を誘った画家フランシスコ・ディアス・デ・レオン。北川の帰国後も2人の交流は続いた。

「メキシコから日本へ」の歩みを見守った友のまなざしが、《ロバ》には染みとおっている。

(世田谷美術館学芸員塚田美紀)


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