1基当たり400万円のベンチ、1平方メートル当たり17万円の道路舗装。東京都渋谷区が再整備を進める玉川上水旧水路緑道(笹塚~代々木)の豪華さが議論を呼んでいる。区議会で「高い」と批判され、住民から困惑の声も上がる。それでも区は「住民の声を踏まえた」事業として進める意向だ。(中村真暁)
◆現在の緑道は1982~85年度に造られた
テラゾー製ベンチなどが置かれた笹塚緑道のイメージ図(東京都渋谷区の資料より)
区緑道・道路構造物課などによると、現在の緑道は1982~85年度に造られ、老朽化が進んでいる。このため、帝国ホテル建て替えなどのプロジェクトを手がける建築家・田根剛さんのデザインで、農園や子どもの遊び場などのある緑道を再整備する。
再整備に伴う舗装やベンチ整備に使われるのが、石材やレンガなどを粉砕して固めた人造大理石「テラゾー」。今回は、環境に配慮して廃材も活用しているという。本年度予算で舗装にかかる費用は1平方メートル当たり17万円。ベンチは、15基を整備するとして6240万円を計上しており、単純計算で1基416万円となる。
◆渋谷区は「緑道を統一的な機能、意匠にデザイン」
今回の舗装計画について、ある舗装会社は、テラゾーによる舗装は「1平方メートル当たり1万円台程度」が相場と首をかしげる。これに対して区は「緑道オリジナルのテラゾー素材。既製品でなく、個別生産しているため」と説明。「歩きやすさ、デザイン性に配慮した」とする。
ベンチも一般の公園と比べて高額だ。一般社団法人日本公園施設業協会東京支部によると、2、3人がけ一般の公園ベンチの相場は20万~30万円程度。400万円という「破格の値段」について、区の担当者は「既製品ではなく、デザイン性がある」と、舗装と同様の説明にとどめた。
◆住民「値段の根拠が分からない」
緑道に設置されるテラゾー舗装のサンプル材=東京都渋谷区で
「高額な理由は」「一般的に言って相当高い」。6月の区議会本会議では、緑道の費用を取り上げる質問が相次いだ。これに対し長谷部健区長は「緑道全体を、統一的な機能や意匠となるようデザインしている」と理解を求めた。
緑道近くに住む会社役員女性(43)は「高額なベンチに決まった経緯や値段の根拠がわからない」と疑問を投げかける。
しかし、区は、地元町会と意見交換し、地域の声を受けて緑道をデザインしたと説明。緑道の再整備の総事業費は概算で113億円を見込み、来年度以降も事業を進める予定だ。担当者は「いろいろな要望を聞いていく」とも話した。
【関連記事】SNSで広がった「意地悪ベンチ」論争排除の対象はホームレス?酔っぱらい?それとも…
【関連記事】渋谷区の樹木伐採、住民の要請で見直し玉川上水の緑道、189本切る計画専門家「健康な木がほとんど」